6. 経路選択モデルの検証

 

 

6.1 経路選択モデルの検証概要

 

 AVENUEはシミュレーションの実行中に,ドライバーが与えられた経路コストに基づいて,目的地までの経路を選択する,動的経路選択モデルを内包している.経路コストはユーザが定義するが,ディフォルトでは目的地までの平均旅行時間と距離,および右左折のペナルティコストの線形和となっている.経路選択挙動についてはコストの定義が異なる5種類のレイヤーを登録でき,それぞれロジットモデルによって確率選択をさせている.

 ここではハイブリッドブロック密度法において,右折容量がどのように再現されるかを検証する.検証のポイントは次の通りである.

 

●経路選択モデル…動的な経路選択挙動が,理論的な原則を満たしているか.またモデルパラメータの設定によりどのような影響を受けるか.

 

 検証に際しては図6.1.1のような1OD2経路の簡単なネットワークを用い,Link1と3の流入/流出交通量を観測した.表6.1.1にモデルパラメータを含むシミュレーションの設定を示す.

 

図6.1.1:経路選択モデルの検証に用いた設定

 

表6.1.1:経路選択モデルの検証に用いた設定

 

 経路コストについては,距離や右左折のペナルティ項を省き,旅行時間のみとした.ここではロジットモデルの感度パラメータθを1.0,0.1,0.01の3段階に設定しているが,このとき2つの経路コスト差から,理論的な選択確率は図6.1.2のように求められる.θ=1.0のケースはわずか10秒以上のコスト差で選択確率がほとんど0/1になるので,必ず最短経路を選択するモデルに近いといえる.

 

図6.1.2:ロジットモデルの感度パラメータと経路コストの差による選択確率

 

 ディフォルトではAVENUEは現在の(=近い過去に集計された)経路コストを用いているため,理論的な枠組みとしては動的利用者最適(DUO)配分に近いものといえる.図6.1.3は図6.1.1の設定におけるDUO原則に従うフローパターンの理論値である.よく知られるように,交通量のハンチング現象が見られる.

 

図6.1.3:DUO原則に従うフローパターン

 

 またAVENUEでは,通常はネットワークに流入する時点で1度だけ,経路コストをドライバーに提示して経路選択をさせ,ネットワーク走行中は経路変更の機会を与えていない.これは扱うネットワークサイズがそれほど多くないため,必要性は低いと考えたためだが,オプションとして任意のリンクやユーザグループを指定して,限定的に走行中の経路変更をさせることも可能である.ここではθ=1.0のとき,走行中の経路変更を認めない場合と認める場合についても比較する.

 

 

6.2 θ=1.0のケース

 

 図6.2.1はθ=1.0の場合のシミュレーション結果である.DUO原則にもっとも近いと考えれられるが,図6.1.3と比べた場合,ハンチングの間隔が長くなっている.これは走行中の経路変更を許していないため,経路コストの逆転がおこっても,その時点で経路を変更するドライバーはネットワークに流入したばかりで分流部に到達するまで時間がかかり,そのためにハンチングの遅れが生じるものである.もし合流部からの渋滞がLink0にまで達していれば,その渋滞に巻き込まれている時間がさらなる遅れの原因となるため,理論的なフローパターンとさらに乖離してしまう.図6.2.2は同様の設定だが,走行中の経路変更を許した場合である.こちらについてはほぼDUOの理論的なフローパターンと同様の結果を示していることがわかる.

 

図6.2.1:θ=1.0,走行中の経路変更なしの場合のシミュレーション結果

 

図6.2.2:θ=1.0,走行中の経路変更ありの場合のシミュレーション結果

 

 

6.3 θ=0.1,θ=0.01のケース

 

 図6.3.1はθ=0.1,図6.3.2はθ=0.01のそれぞれの場合のシミュレーション結果である.走行中の経路選択は許していない.θが小さくなるにつれ,図6.2.1の場合と比べてハンチング現象が穏やかになっており,確率的に選択している影響が確認できる.

 

図6.3.1:θ=0.1,走行中の経路変更なしの場合のシミュレーション結果

 

図6.3.2:θ=0.01,走行中の経路変更なしの場合のシミュレーション結果


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